IllustratorやPhotoshopでのデザインデータ作成時によく登場するファイル形式「EPS」。
デザイナー的には画像を含む印刷用データの作成において、EPSファイルを使わない場合なんてないんじゃないの?ってくらいに頻繁にお世話になっていますよね。
そんなEPSファイル、まさかのオワコンって知ってました?
あ、「オワコン」は「終わったコンテンツ」のことね。つまり時代遅れのファイル形式ということ。
ちょっと大げさに言いましたが強ち言い過ぎでもないんですよね。僕も最近知って驚きましたし、時代の流れを感じますよ……。ということで備忘録も兼ねて記事にしておきます。
EPSとは
EPSとはAdobe社が開発した、PostScriptというプログラミング言語をベースとした画像ファイルフォーマットのこと。
おおまかに言うと、EPSとはEncapsulated PostScriptの略で、Adobe社が開発したPS(PostScript)を基盤とした、ベクトルデータとビットマップデータの両方を含む画像ファイル形式です。
Encapsulated PostScript(エンキャプサレイティッド・ポスト・スクリプト)の頭文字を取ってEPS。拡張子は「.eps」になります。
Photoshopを使った画像ファイルはもちろん、Illustratorで作ったファイルをEPS形式にすることもできます。
EPSのメリット・デメリット
EPSのメリットは、ファイル内部に印刷用の実データと画面表示用の低解像度データの2種類を持ち合わせていることです。
Illustrator上でEPSファイルをリンク配置することで低解像度のプレビュー画像で作業することができ、動作が重くならないようになっています。
デザイナーにとっては作業上のメリットがめちゃめちゃあります。大量の画像が実データだったりすると重すぎて仕事にならないなんてこともあるので、動作が軽い、速いというのはかなり大事です。
他には
- 圧縮方式を選ぶことでファイルを軽くできる
- ほぼ全てのDTPアプリケーションに対応している
- 業界標準のPostScriptプリンターとの互換性が高く安全に出力できる
といったメリットがあります。
逆にデメリットとしては
- 透明効果を保持したまま保存できない
- PostScriptプリンター以外で印刷するとプレビュー画像で印刷されてしまう
といったデメリットがあります。
なぜEPSはオワコンなのか?
上記のようにちゃんとメリットがあるのになぜEPSはオワコンなのでしょうか?
それはズバリPostScriptがオワコンだから!
これまでは印刷現場の共通言語がPostScriptでした。印刷現場がPostScriptプリンターなので、デザイナー側のデータもPostScriptベースのEPSが適していたのです。
ですが最近はPDFファイル形式が共通言語になりつつあります。現在の印刷現場はPDFを前提にしており、なにがなんでもPostScriptという時代ではなくなったのです。
印刷側がPostScriptではなくなったので、PostScriptを使用しない、つまりはEPSを使用しないワークフローが現在では一番安定している出力方法なのです。
まさかの今までと完全に逆!これ、意外と知らずにPostScript神話を信じ続けてる人いそうです。今や逆なんですよ。
あと透明効果が当たり前になったということもありそうです。ドロップシャドウなどの特別な扱いだった透明効果ですが、いまや当たり前のように使いますよね。
Photoshopでの透明を使った切り抜きなんて、抜群に使いやすくてもはや欠かせない処理。でもこれ、EPSでは保存できず、PSD形式でないと保存できません。
なんでもかんでもPostScriptだった時代は過ぎ去り、いまやAI、PSDなどのネイティブファイルの時代が来ています。
実際、アプリとファイル形式の開発元であるAdobeがネイティブ形式を推奨しています。
参考 プリプレスワークフローの変化、共同印刷とDNPメディアアートはPDF/X-4運用へ
今までの運用とこれからの運用
今までは以下のようなワークフローが一般的でした。
- 画像、オブジェクトはすべてEPS形式でリンク配置
- AIもEPS形式にして入稿
実際はAIデータまでEPSにすることはあまりないかもしれませんね。ただ新聞広告などはまだまだEPSでの入稿を指示してくることが多いです。
これが、これからの運用は以下のようになります。
- 画像、オブジェクトはPSD、AI形式でリンク配置
- AIはPDF形式にして入稿
ネイティブ形式を使った上で、入稿データをPDF形式にすることが推奨されています。
今後はAI、PSDが主流になる
現状はまだまだ配置画像はEPSで運用している、というところが多いんじゃないかなと思います。
リンク配置しても動作が軽いし、ファイル自体もPSDに比べて軽いので扱いやすいんですよね。僕のところは完全にEPS。まだまだデカい顔してますよ、EPSが。
とはいえ、すぐには移行しないにしても今後はその必要があること、EPSの時代が終わりに近づいていることを頭に入れておくべきですね。
AI、PSDが主流になる未来はすぐそこまで来ています。