Illustratorのアートボードのサイズは仕上がりサイズにするのがスタンダードですよという話

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どうも。グラフィックデザイナーのケンスです。

Illustratorでデザイン制作をする場合、まずは新規ファイルを作成すると思うのですが、この時、アートボードのサイズってどうしてますか?

例えばA4サイズのフライヤーを制作するとして、アートボードのサイズは仕上がりサイズのA4にしますか?もしくは仕上がりよりひと回り大きいB4にしますか?

これ、結構デザイナーによって違うような気がします。個人的な感覚ではデザイナー歴の長いベテランほどひと回り大きい派で、若手というか今どきのデザイナーは仕上がりサイズにするのイメージ。

結局どっちでもちゃんと印刷物として完成するんやからええやん、という声が聞こえてきそうですが、そうでもないんですよね。

じゃあどっちがええんや?って話なんですが、正解は「仕上がりの実寸サイズで作る」です。

ということで、今回はIllustratorのアートボードのサイズについて「なぜ仕上がりサイズがいいのか」「仕上がりサイズで作るメリット」をお伝えしたいと思います。

ひと回り大きいアートボードとは

ひと回り大きいアートボードとはどういうものかというと、下の画像のような状態ですね。

アートボードを実際の仕上がりサイズよりひと回り大きいサイズにしている状態です。実寸A4に対してアートボードB4といった感じですね。

ポイントはトンボがアートボード内に収まっていること。トンボが入っていればB4でなくてもOKなんですね。なんせトンボが入っていればいい。

他にもポストカードの表、裏の2面を1つのアートボード内にトンボ付きで作るケースなんかもよく見ますね。

なぜひと回り大きいアートボードを作るのか?

デザイナー側の意見として一番大きな理由は「トンボも含めてプリントできる」ということですね。昔はアートボードの中しかプリントできませんでした。なのでアートボード内にトンボを含めたすべての要素が収まっていないと不便だったんですよね。

入稿時のカンプやクライアントに届けるカンプなど、トンボも含めてプリントすることが多いので、最初からそのようにプリントできるようにアートボードを大きくしておく、ということです。

またPDFに書き出した時に、アートボードの外側がPDFに反映されないことも理由としてありました。昔はアートボードの外にトンボを作っていてもPDFにしたときに反映されなかったんですね。

また当時は多くの印刷会社が「実寸よりひと回り大きいアートボードで入稿データを作るように」といった仕様を推奨していました。なのでこの指示にデザイナー側が従った、という言い方もできると思います。

「アートボードは仕上がりサイズ」がスタンダードに

上記のような理由でひと回り大きいアートボードで制作するのが主流でした。というかこれしかダメだった。ベテランデザイナーの多くは「アートボードはひと回り大きく!」と言われて育ったはずです。僕も新米のときはそう教わりました。

ですが時代は変わりました。今は「アートボードは仕上がり実寸サイズ」にするべき。これが定番、というかもはやスタンダードですね。

いまだに「ひと回り大きいアートボード」で作るべきと教えている人もいるようですが、これは古いです。情報のアップデートができていません。もはや「ひと回り大きいアートボード」は過去の人。(人じゃない)

その理由ですが、「ひと回り大きいアートボード」にあえてしていた理由、

  • アートボードの中しかプリントできない
  • PDFにした際、アートボードの外側が反映されない
  • 印刷会社側の仕様

これらがすべてひっくり返ったからです。Illustratorの進化によってプリントもPDFも全部できるようになりました。なのでわざわざアートボードを大きいサイズにする必要がなくなったということです。

その中でも何が一番大きいかというと、印刷会社側の仕様だと思います。結局、デザインにおいてIllustratorのデータは何のためのデータかというと、印刷するためのデータです。その印刷のために適したデータにすること、これが一番大事。

その印刷会社側が「アートボードは仕上がり実寸サイズに」と方針を変えています。いまはほとんどの印刷会社が仕上がりサイズのアートボードを推奨しているはずです。(たまに例外があります)

これは昔は印刷工程がEPSベースで動いていたものが、いまはほぼPDFベースに移行した、という技術的な環境の変化が理由ですね。「EPSはオワコン」ということです。

IllustratorやPhotoshopでのデザインデータ作成時によく登場するファイル形式「EPS」。 デザイナー的には画像を含む印刷用データの作成において、EPSファイルを使...

いまやPDF入稿時には仕上がり実寸のアートボードに塗り足しをつけたら、トンボすらいらない、むしろつけるな、という印刷会社もあるくらいです。

PDF書き出し時に仕上がりサイズと塗り足しを含めたサイズがPDF内に情報として記載されるのでトンボがなくてもいい、ということのようです。時代は常に変わっているんですねえ。

アートボードは仕上がり実寸サイズにしよう

ということでIllustratorのアートボードは仕上がり実寸のサイズで作りましょうというお話でした。

いまだに昔ながらの方法で突き進んでいるベテランデザイナーの方は、この機会に仕上がりサイズのアートボードを取り入れてはいかがでしょうか。また新人デザイナーに教える際にも今の時代にあった方法を教えてあげてほしいですね。

まれに、昔ながらのひと回り大きいアートボードで入稿してほしいという印刷会社もまだあります。そういう時はもう黙って従うのがベスト。

アートボードのサイズは結局のところ、印刷会社が望む形にしてあげることが一番です。印刷会社が一番扱いやすい形式にデザイナー側があわせてあげる。思いやりですよね。デザインは結局思いやり。

これでいい感じに締まったということで……

では、良きデザインライフを!

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