アイドルへの贈り物にそのアイドルの写真を使うのはOK?肖像権・著作権について考えてみる

SHARE

先日とあるアイドルグループのライブイベントに行ったのですが、会場にそのアイドルのファンが贈ったであろうスタンドフラワーが設置されていました。

立派なスタンドフラワーだったのですが……

よく見てみると……

なぜにシルエット!?!?なんか不気味やん!!!
ジャニーズかよ!って思いません???

立派なスタンドフラワーなのにもったいないと思ってしまいました。いや、贈るだけでも大変なのはわかるんですよ。でもねえ……これはどうなのよと。

おそらくは「肖像権」「著作権」といった諸権利に配慮したためにこの状態になったのでしょう。

めちゃめちゃ気になったのでなぜこのような状態になったのかを考えてみることにしました。

肖像権について

肖像権とは自分の肖像を他人に使わせない人格的権利のこと。

他人から無断で写真や映像を撮られたり無断で公表されたり利用されたりしないように主張できる考え

引用:Wikipedia|肖像権

自分の肖像が勝手に撮影されたり、絵に描かれたり、加工・公開などの使用をされない、という権利ですね。

ただこの肖像権、日本の法律には存在しません。法律で明文化されていないのです。これは意外。とはいえ、判例上認められている権利ですので、全く無視していいかというとそういうわけにはいきません。

また、肖像を商業的に使用する権利、「パブリシティ権」があります。

人に備わっている、顧客吸引力を中核とする経済的な価値(パブリシティ価値)を保護する権利

引用:Wikipedia|パブリシティ権

芸能人、スポーツ選手、そしてアイドルなどの有名人はこの権利に大いに関係があります。

有名人は肖像そのものに商業的価値があり財産的価値を持っています。有名人の肖像を無断で使うことは商業的・財産的価値を侵害することになり、それはたまったもんじゃない、ということでその価値を守るためにパブリシティ権と言う概念ができました。

ちなみにこのパブリシティ権についても法律で明文化はされていませんが、保護されるべき権利と解釈されています。

著作権について

著作権とは著作者が、自己の著作物の複製・翻訳・放送・上演などを独占する権利のこと。

著作物を他人に使用させる許可を与えたり、著作物を財産として所有したりすることのできる権利

引用:コトバンク|著作権

この著作権は「著作権法」という法律があり、著作権の範囲と内容についてキチッと定められています。

書物、音楽、絵画、映画、建築など、様々な著作物についてその権利が認められています。

今回の場合はセーフ?アウト?

今回のスタンドフラワーの場合、肖像権・著作権に関わりそうな3つのデザインが使われていました。

  • イベント名のロゴデザイン
  • アイドルグループのグループ名ロゴデザイン
  • アイドルグループのシルエット

イベント名のロゴとアイドルグループのロゴについては元のデザインをそのまま使っているように見えます。このロゴには著作者が持つ著作権があり、その権利を侵害していると言えるので……アウトです。

アイドルグループのシルエットについては、このアイドルのアーティスト写真からシルエットに加工していると思われます。肖像権のなかに「勝手に加工をされない」という権利があるので、これもアウトですね。

またアーティスト写真には撮影したカメラマン、もしくは所属事務所に著作権があるはずなので、これを侵害している可能性もあります。

肖像権・著作権侵害は「親告罪」

厳密には違法なのですが、肖像権・著作権の侵害は「親告罪」

被害者の告訴がないと起訴できない種類の犯罪です。今回の場合だとアイドルグループ側が告訴しない限り、罪に問えないということになります。

アイドルへの贈り物なので営利目的ではないでしょうし、またアイドル側の営利を妨害するものでもありません。そういった状況から告訴するほどではないと判断されたのでしょう。

よくアイドルファンの間では、自分が応援しているアイドルの写真をプリントしたTシャツなどの自作グッズを作って盛り上がる、ということがあります。

これについても厳密には違法なのですが、そのアイドル側が容認している場合があります。「金銭が絡まず、個人や仲間内で楽しむ範囲なら黙認する」と明言しているアイドルグループもあるほどです。

つまりファンが個人的に楽しむ分には見て見ぬ振りしてやるよってことですね。創作意欲のあるファンとしては嬉しいですよね。またこういったファン側からの発信が思わぬ宣伝効果を生んだり、アイドルとファンとのコミュニケーションになったりとプラスの側面もあったりします。

無断で著作物や肖像を使うことはダメ

結局のところ、アイドルの写真などの肖像や著作物について、肖像権・著作権侵害に当たるので無断で使用してはいけません。

事実上黙認されているだけで基本アウトと思った方がいいですね。

逆に使用できる場合というのは、基本的には権利者から許可を得た場合のみとなります。

今回のスタンドフラワーのケースでは、会場やイベント主催者、アイドルの事務所に花を贈る許可を取っていると思います。こういうのは基本、勝手に贈れないですからね。

おそらく、その時にロゴの使用や写真の使用についても許可を得ようとした、もしくは許可を得たんじゃないかなと想像します。わざわざシルエットにするくらいだから諸権利についての意識が高い人たちなんじゃないかなと。

もし許可を得ているなら全く問題はありません。むしろ長々と記事にしてすみませんという気持ち。

ただ、そこまで意識高いなら……写真を完全に使う許可を取ったれよと!!!

ていうか、シルエットにするなら使うなよと。加工してるやん。デザイナー目線で言うとシルエットにしてまで使うならそもそもいらないですね。

まあでも権利を守る意識が高いがゆえ、シルエットになったのでしょう。この意識の高さは素晴らしいですよ。

ということで「肖像権・著作権を守るためにシルエットになっていた」がファイナルアンサーだと思います。

まとめ

今回の件で肖像権・著作物についてより深く知るきっかけになりました。

アイドルファンなら一度くらい自作グッズを作ろうと思ったり、今回のようにプレゼントを企画したりということがあるかと思います。そのような場合にも肖像権・著作権についてしっかり考えた上で創作しなければいけませんね。

とはいえ権利はもちろん大事ですけど、表現の自由も大事にしたいですよね。何してもいいってことじゃないですけどね。

基本的には許可を得なければダメ。そこは守りつつ、デザインなり創作なりを楽しんでいきましょう!

スポンサーリンク

SHARE