デザイナーなら知っておきたい定番の欧文フォント【サンセリフ体】

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デザインをする上で重要なことは沢山ありますが、その中のひとつが「フォント」です。フォントの選び方ひとつでデザインの善し悪しがガラッと変わることもあります。それくらい重要なフォントの選定。うまく使うために、まずはどんなフォントがあるかを知っておくことが大事ですね。

ということで、デザイナーなら知っておきたい定番の欧文フォントをご紹介します。

今回はその中でも「サンセリフ体」に絞ってご紹介。ちなみに「セリフ体(ローマン体)」こちらでご紹介しています。

デザインに大きな影響を与える要素のひとつがフォントです。どんなフォントを選ぶのかはデザイナーの腕の見せどころでもあります。そのためにはまずフォントのことを知っておくことが大事。 というこ...

個人的な好みも入っていますが、なるべく定番中の定番を選んでみました。定番フォントを知っていると知らないとでは大きな違いがでます。知らなかったという方はぜひ参考にしてみてください。

「セリフ体」「サンセリフ体」とは

欧文フォントは大きく分けると「セリフ体」「サンセリフ体」の2つに分類できます。「セリフ」とは欧文フォントの先端にある小さな飾りのこと。「うろこ」、「ひげ」と呼ばれたりもします。このセリフがあるフォントを「セリフ体」(ローマン体)といいます。和文フォントでいうところの「明朝体」が近いイメージですね。

このセリフがないフォントのことを「サンセリフ体」といいます。「サンセリフ(sans serif)」の「サン(sans)」はフランス語で「ない」という意味。セリフがないのでサンセリフ、となるわけです。和文フォントでいうところの「ゴシック体」が近いイメージになります。

ざっくりとですが、セリフ体は気品のある、古風、格調高いイメージサンセリフ体はシンプル、カジュアル、新鮮なイメージ……といった印象の違いがあります。この辺りはフォント選びの際に、意識するといいかもしれません。

では今回ご紹介する「サンセリフ体」、どうぞー!

Helvetica

Helvetica(ヘルベチカ)は1957年にスイス人のタイポグラフィ・デザイナー、Max A.Miedinger(マックス・ミーディンガー)とエドゥアルト・ホフマン(Eduard Hoffmann)が制作したNeue Haas Grotesk(ノイエ・ハース・グロテスク)を原型とした書体です。

デザイナーでこの書体を知らない人はいないと言っていいでしょう。それくらい世界中で使用されている、世界一有名な書体です。汎用性が高く、どんなケースでも非常に使いやすいフォントです。

誠実さ、信頼感があり、何より普遍的。「何も持っていないが全てを兼ね備える」と言われるほどの完成度を誇る、もはや永久定番の書体です。

BMW、Panasonic、evianなど様々な企業のロゴでも使用されています。

ちなみにHelveticaはラテン語で「スイスの」を意味します。

Akzidenz Grotesk

Akzidenz Grotesk(アクチデンツ・グロテスク)は19世紀に誕生した歴史ある古典書体。100年以上も前なので詳細が不明な点も多い書体です。

後に誕生したHelveticaのもとになったとも言われています。個人的にはHelveticaではなく、あえてAkzidenz Groteskを使っているのをみると粋だな~なんて思っちゃいますね。

Univers

Univers(ユニバース)は1957年にスイス人の書体デザイナーAdrian Frutiger(アドリアン・フルティガー)によって制作された書体。

Helveticaと比べてエレガントでより近代的、洗練された印象のある書体です。Helveticaほどではないにしろ、Universもザ・定番の書体であり、現在でもよく見かける書体ですね。

多くの書体が後からファミリー(太さ違いや斜体など)を追加しているのですが、Universは設計時からファミリー展開を含めて設計されているのでファミリー間の統一感がキッチリしているのも特徴です。

Frutiger

Frutiger(フルティガー)は書体デザイナーのAdrian Frutiger(アドリアン・フルティガー)によって制作された書体。自身の名前を書体名にした超有名書体ですね。

元は1960年代にフランス・パリのシャルル・ド・ゴール空港の案内標識をデザインするために制作されたため、視認性が高いのが特徴。

JRや東京メトロのサインに使用されているのでよく見かける馴染みのある書体だと思います。

Avenir

Avenir(アベニール)は、FrutigerやUniversなどを制作した書体デザイナーのAdrian Frutiger(アドリアン・フルティガー)による書体です。

個人的にめちゃめちゃ好きなフォント。無機質な美しさと人間的な温かみ、モダンなんだけど普遍性がある、みたいな絶妙なバランス感覚のあるフォントだと思います。

Futura

Futura(フーツラ)はドイツのPaul Renner(パウル・レナー)が1923年に発表した書体。

直線と円を組み合わせた幾何学的な造形が特徴です。どこか可愛らしい印象もありつつ現代的な雰囲気なので使いやすい書体です。

ルイ・ヴィトンやフォルクスワーゲンなど、世界的に有名なロゴでも使われています。ちなみにfuturaはラテン語で「未来」を意味します。

Avant Garde Gothic

Avant Garde Gothic(アヴァン・ギャルド・ゴシック)は、アメリカの巨匠グラフィックデザイナーであるHerb Lubalin(ハーブ・ルバーリン)作の書体。

もともとは雑誌「Avant Garde」のロゴのためにデザインされ、後にオリジナルのフォントとして発売になりました。

幾何学的なデザインと、複数の文字を合体させて一文字にしたリガチャ(合字)の豊富なバリエーションが人気ですね。

ちなみにAKB48やNMB48などの48グループのロゴもこの書体が使われています。

Century Gothic

Century Gothic(センチュリーゴシック)は1991年にフォントメーカーであるMonotype社からリリースされた幾何学的なデザインが特徴の書体。

この書体のように、直線や円弧など幾何学的なデザインで形成されているサンセリフ体を「ジオメトリックサンセリフ」といいます。

Avant Garde Gothicに似ているので、代わりとして使われることがあります。

Franklin Gothic

Franklin Gothic(フランクリン・ゴシック)は1902年にMorris Fuller Benton(モリス・フラー・ベントン)によって作られた書体。古風な佇まいが力強さを感じさせます。

全ての文字がやや細身になっているのが特徴で、少ないスペースに文字を詰め込まなければならない新聞の見出しや広告などに使われるようです。

Gill Sans

Gill Sans(ギル・サン)はイギリスの芸術家Eric Gill(エリック・ギル)が1927~30年にかけて制作した書体。

サンセリフ体といえば固いイメージがありますが、この書体は固いなかにもどこか柔らかさのある、とても品のある書体だと思います。モダンでありながら温かさのあるフォルムが個人的にも好きなところですね。

BBC((英国放送協会)が制定書体に定めているほか、wikipediaなど、様々な企業・団体で使用されています。

個人的には江角マキコの写真集「ESUMI」のタイトルに使われていたのがインパクト大でめっちゃ覚えています。

DIN

DIN(ディン)はDeutsche Industrie Normen(ドイツ工業規格)の略称。このドイツ工業規格のための書体がDINです。

ドイツの標識や高速道路で使われています。工業規格用のフォントということで、機械的でクールな印象があります。

一時期爆発的に流行して、日本でもいたるところで目にしました。今でもよく見かけるフォントですね。

Myriad

Myriad(ミリアド)1992年に発表されたAdobeオリジナルの書体。Frutigerの模倣フォントのひとつ。

Frutigerとほとんど同じような形ですが、細かい調整がしてあり、可愛らしく上品な印象を与えてくれます。以前にAdobeやAppleのコーポレートフォントとして使われていました。

Optima

Optima(オプティマ)はドイツの書体デザイナー、Hermann Zapf(ヘルマン・ツァップ)によって制作された書体。

サンセリフ体でありながら、縦線と横線の太さが異なり、縦線のほうが太くなっています。この抑揚がエレガントかつシンプルな独特の美しい書体を作り上げています。

他の書体より圧倒的に見分けがつきやすく、パッと見で「Optimaや!」と認識できるデザインですね。GUCCI、ASTON MARTIN、GODIVAのロゴのベースとして使用されるなど、化粧品や女性誌・ファッションブランドなどのロゴでよく見ることができます。

Gotham

Gotham(ゴッサム)は世界的に有名なフォントメーカーHoefler & Co.(旧 Hoefler & Frere-Jones)によって2000年に制作された書体。

元々はアメリカのメンズファッション誌「GQ」に依頼されて制作した書体で、GQの独占使用権が切れた2002年に製品として公開されました。

丸みを帯びた自然な幾何学的な形状と豊富なファミリーを持つ現代風な佇まいが特徴の書体です。

2009年ごろのアメリカ大統領選挙でオバマ大統領の特設Webサイトやスローガンなどに大々的に使用され、一躍有名になりました。比較的新しい書体ですが、もはや定番感すらある書体です。

まとめ

いかがだったでしょうか。意外とまとめるの大変でした……。

まだまだ定番の書体はありますが、ひとまずはここまでとさせてください。

これまで使用されてきた歴史がある定番の書体なので、まずはこれらを使用することが良いデザインへの近道なんじゃないかなと思っています。

ちなみに全て有料の書体となりますが、MacやAdobe製品に最初からインストールされているものもあります。意外と手元にある、なんてことがありますのでぜひ探してみてください。

では、良きデザインライフを!

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