どうも。グラフィックデザイナーのケンスです。
苦労してデザインを作り上げ、クライアントの校了ももらい、さあ入稿だ!と、意気揚々と入稿用PDFを書き出したら……
なんか白い線が入ってるんですけど!?!?
デザイナーなら1度くらいはこの現象に遭遇したことがありませんか?せっかく校了してひと段落かと思ったら、また不安なイベント発生して気が気じゃない……。
印刷に影響するの?
PDFは作り直さないといけない?
不安に思いますよね。ただでさえ入稿ということで神経使うのに、これはどう対処したらいいのか。
PDFに突如として出現した白い線について、原因と対策をまとめてみました。
PDFに白い線が入る
デザインデータを印刷会社に入稿する際、データをPDFに書き出し、そのPDFを入稿する、というのが一般的なワークフロー。この時、PDFでの入稿データとして推奨されることの多い形式が「PDF/X-1a」です。
「PDF/X-1a」とは、印刷用途向けの規格である「PDF/X」のひとつ。「PDF/X」には「PDF/X-1a」「PDF/X-3」「PDF/X-4」などがありますが、この中でも最も基本的なフォーマットが「PDF/X-1a」です。
簡単に言うと印刷用途向けに最適化されたPDFですね。この「PDF/X-1a」にしておくと印刷会社に「データの不備あり!」と怒られることもなく、基本的にはばっちり印刷できるデータですよということになります。
ということで、入稿用に「PDF/X-1a」で書き出したところ……
白い線が出現。むうう!なんやこれ!
白い線が入る原因
この白い線が出る原因はズバリ「透明効果」です。デザインデータに透明効果を使用していると出現します。
透明効果とは「ぼかし」や「ドロップシャドウ」のような効果のこと。オブジェクトの不透明度を変更することも透明効果を使うことになります。
上のサンプルでは文字と枠線にドロップシャドウを使っています。
透明効果を使っているデザインデータを「PDF/X-1a」に書き出すと、透明効果とその影響のあるオブジェクトが分割・統合されます。これは「PDF/X-1a」が透明効果を使用できない規格のため。
この処理の結果、分割・統合されたオブジェクトの境界線が白く見えてしまうのです。
印刷に影響するのか?
PDF上の白い線は印刷に影響するのかどうかが気になるところですが、PDFを拡大表示して白い線が消える(太くならない)ようであれば影響はありません。
白い線は透明効果が分割・統合された際の境界線ということがわかりましたが、実際に白い線があるわけではなく、多くの場合、画面表示用の計算誤差によって「そう見えている」だけです。PDFを拡大・縮小して線が消えていれば画面表示の都合でそう見えているだけなので安心してOKです。
またAcrobatの場合、画面表示の設定を変更することで白い線が消えることがあります。この場合も表示上の問題で白い線が見えていただけということになり、印刷には影響ありません。
メニューから「環境設定」を開き、左側の分類リストから「ページ表示」を選択します。
真ん中付近にある「レンダリング」項目の下の「ラインアートのスムージング」のチェックを外します。右下の「OK」をクリックし、PDFを確認します。
ただし、PDFを拡大していくと線が太くなっていく場合や、上記の表示設定を行っても白い線が出る場合は表示上の問題ではなく、実際に白い線が存在すると考えられ、印刷に影響が出てしまいます。注意してください。
白い線が出ないようにするためには
PDF上の白い線は多くの場合で問題ないのですが、最初から出ない方がスッキリするし、できるならそうしたい。ということで白い線が出ない方法をご紹介します。
その方法はPDFを「PDF/X-1a」ではなく「PDF/X-4」で書き出すこと。
「PDF/X-4」は「PDF/X-1a」とは違い、透明効果をサポートしています。透明効果を使用していてもそのままPDFとして保存することができます。ですので白い線が発生する原因である「透明効果の分割・統合」が行われず、白い線が出ないのです。
印刷用PDFとして「PDF/X-1a」が長く主流な形式でしたが、これからは新しい形式である「PDF/X-4」が主流になっていくはずです。なるべく「PDF/X-4」で書き出すことをおすすめします。
入稿用PDFについては別記事で解説していますのでこちらもご覧ください。
まとめ
注意すべき点はありますが基本的にはPDF上の白い線は気にしなくていい、というのがファイナルアンサーです。不安だったら「PDF/X-4」で書き出しておけば大丈夫。
時代はPDF/X-4に進んでいくのでこの機会にPDF/X-4をワークフローに取り入れることを検討してもいいかもしれませんね。
では良きデザインライフを!